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はじめに

ビジネスモデル特許とは、ビジネスモデルに係る特許のことです。しかし、ビジネスモデル本来の語義である利益を生む仕組みそのものを保護するものではありません。

そもそも特許とは、技術的思想の創作である「発明」を保護する制度です。したがって、ビジネスモデルのうちなんらかの技術的要素(特に多いのがソフトウェアを用いるもの)を含むものであることが特許として成立する条件となります。これには、「コンピュータソフトウェア関連発明」についての理解が必要です。

ポイント

  • そもそもビジネスモデル自体が特許となるわけではない
  • 技術的思想たるハードウェアを規定する必要がある
  • ソフトウェアとハードウェアが協働して動作する

Amazon 1-Click(ワンクリック)特許の例

Level 1: ビジネスモデル自体 → NG

1-Click(ワンクリック)

従来のショッピングカートモデルに変えて、1-Click(ワンクリック)で商品のオンライン購入を可能にするビジネスモデル。

要件1:「自然法則を利用した技術的思想の創作」であること

新規なビジネスモデルを考案し、いかに売上に貢献しようとも、ビジネスモデル自体は「人為的な取決め」です。すなわち、「自然法則を利用した技術的思想の創作」には当たらないので、ビジネスモデル特許を取得することはできません。「自然法則を利用した技術的思想の創作」とされるためには、何らかの技術的要素であるハードウェアを規定する必要があります。

NG例

ユーザーが購入したい商品を1-Click(ワンクリック)すると、その商品の購入注文(決済)を完了させるショッピング方法。

Level 2: ハードウェアを単に追加 → NG

要件2:「ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されている」こと

要件2を満たすものが「自然法則を利用した技術的思想の創作」である発明と判断されます。ここで、「ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されている」とは、「ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することによって、使用目的に応じた特有の情報処理装置又はその動作方法が構築される」ことをいいます。したがって、単なる汎用コンピュータ等を追加するだけでは、ソフトウェアとハードウェアが協働しているとはなりません。

NG例

ユーザー端末により、ユーザーが購入したい商品を1-Click(ワンクリック)し、サーバにより、1-Click(ワンクリック)に応じてデータベースを検索し、商品の購入注文(決済)を完了させるショッピング方法。

Level 3: ソフトウェアとハードウェアが協働 → OK

要件3:「ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することによって、使用目的に応じた特有の情報処理装置又はその動作方法が構築される」こと

要件3を満たすためには、あるビジネスモデルにおいて実行される特定の処理・機能・作用等を実現するために、ソフトウェアとハードウェアが「いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように処理するか(※)」を具体的に規定する必要があります。少なくとも、機能ブロック図とフローチャートは描ける程度が求められます。(※)5W1Hを全て満たす必要はありません。

ビジネスモデル特許として保護されるために:具体的なデータと処理を検討

  • ユーザー端末 → サーバ
    • データ:商品ID, ユーザーID等
    • 処理:ユーザー端末からサーバに購入要求を送信
  • サーバ → データベース
    • データ:ユーザーIDに紐付いたユーザーデータ(住所、カード番号・・・)
    • 処理:サーバからデータベースにユーザーIDを送信/データベースからサーバにユーザーデータを送信
  • サーバ → 配達司令
    • データ:購入商品、ユーザーの住所、配達時間
    • 処理:サーバから配達管理システムに各種データを送信

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